この記事は約4分で読めます。
本文は約2237文字です
Jennifer Havice著「Finding the Right Message」のメソッド
この書籍が特に優れている点、他のマーケティング書と一線を画す「ユニークさ」は、「聞いた声を、具体的にどのようにコピーという形に変換するか」という、これまでブラックボックスだったプロセスを、誰でも再現可能な「工程」にまで分解した点にあります。
この書籍の核心的なユニークさは、以下の3点に集約されます。
①:「調査」と「執筆」を繋ぐ、他書にはない「具体的な工程」
多くのマーケティング書は「顧客の声を聞け」と説きますが、「では、インタビューやアンケートで得た生の声という“素材”を、どう料理して“完成品”であるコピーにするのか?」 という最も重要なプロセスを省略しているか、抽象的な説明で済ませています。
この書籍は、このプロセスを 「メッセージの採掘 (Message Mining)」 という具体的な工程として提示しています。
- 独自のフレームワーク: 収集した生の声(アンケート回答、レビュー、インタビュー記録)を、以下の4つの「バケツ」に分類することを強く推奨します。
- Wants/Needs (欲求・ニーズ)
- Pain Points (痛点)
- Hesitations/Anxieties (ためらい・不安)
- Motivational Triggers (動機のトリガー)
- 単なる分類ではない: これは単なる分類作業ではありません。各カテゴリーに振り分けながら、「これはどのバケツに入る言葉か?」と問い続けることで、顧客の発言の背後にある「感情」や「コンテキスト」を理解することを促す、思考のフレームワークなのです。
- 最終アウトプット: この作業の結果、「優先メッセージリスト」 と 「顧客マインドセット分析マップ」 という2つの具体的な成果物が得られます。これらは、コピーを書き始める際の設計図として機能します。この「設計図を作る」工程の存在が、他書にはない最大の特徴です。
従来のアプローチ: 顧客の声を聞く → (魔法の箱) → コピーが出来上がる
この書籍のアプローチ: 顧客の声を聞く → 4つのバケツで分類・分析 → 設計図(優先メッセージリスト)を作成 → 設計図に基づいてコピーを執筆
②:顧客不在でも始められる「レビュー採掘」という現実的ソリューション
「顧客にアンケートを送っても返事が来ない」「スタートアップで顧客がいない」という、多くのビジネスオーナーが直面する現実的な課題に対して、画期的な解決策を提示しています。
それが 「レビュー採掘 (Review Mining)」 です。
- 発想の転換
- 自社の顧客がいなければ、競合他社や類似サービスの顧客の声を“採掘”すればよいという発想です。
- 具体的な手法
- Amazon、Yelp、業界フォーラム(Redditなど)といった公開された場にある、他社の製品レビューを分析対象とします。
- そこには、喜び、不満、使い道など、生々しい顧客の声が溢れており、それを先述の「4つのバケツ」に分類して分析するのです。
- 現実味
- この手法により、リソースが限られている個人事業主やスタートアップでも、ゼロから質的な顧客インサイトを構築できる道筋を示した点が、非常にユニークで実用的です。
③:「定性的データ」を「定量化」する実践的な手法
クリエイティブや「数字が苦手」な人に向けて、心理的なハードルを下げつつ、定性的データを体系化する方法を説いています。
- 「言葉」の数を数える
- 調査で収集した顧客の声の中から、繰り返し登場する単語やフレーズにひたすらチェックマークをつけ、出現頻度順に並べるという、シンプルながら強力な手法を推奨しています。
- インサイトの可視化
- この作業を通じて、「frustration(欲求不満)」「confidence(自信)」「overwhelmed(圧倒された)」 といった、顧客が最もよく口にする感情を表すキーワードが浮かび上がります。
- これにより、漠然とした「顧客の気持ち」が、コピーに直接埋め込むべき具体的な「言葉」に変換されます。
- 魔法の解除
- 優れたコピーライターが「なぜあの言葉を選んだのか」という、感覚や経験則に頼りがちな部分を、再現可能なデータ処理の工程として提示した点が画期的です。
まとめ:この書籍の真の価値
この書籍のユニークさは、「Why(なぜ顧客の声が重要なのか)」 という理念論ではなく、「How(具体的にどうやって声を集め、分析し、形にするのか)」 という実践論に徹している点にあります。
それは、料理のレシピ本のように、
- 素材(顧客の声)をどこで手に入れるか(自社調査/レビュー採掘)
- その素材をどう下処理するか(4つのバケツで分類)
- どう味付けし、盛り付けるか(優先メッセージリストからコピーを作成)
という一連の流れを、誰でも追えるように詳細に記した 「コピーライティングのレシピ」 であると言えます。
したがって、このコンテンツの核心を伝えるプレゼンでは、「顧客の声が大事」という結論そのものよりも、「声をコピーに変換するための、具体的でユニークな3つの工程」 に焦点を当てて構成することをお勧めします。
